何人もの競作になった曲だが、僕は本家本元の「早川義夫」が歌う「サルビアの花」が好きだった。
映画「卒業」のようなエンディングも用意されていない、どう聞いてもハッピイエンドではなく恨みごとに聞こえる歌詞(作詞は早川本人でなくて相沢靖子)を、僕は、当時さして気にもせず歌っていた。
僕は君を愛している、でも君は僕に興味を持っていない。
僕は君を幸せにできる、でも君は気付いていない。
君は結婚する相手を間違っている、なのにどうして・・・延々とそう歌う早川は、どうひいき目にみても、自己中心のストーカーであった。
だから、教会の「白」に対じさせたサルビアの「赤」が、僕には妙に「おどろ、おどろしく」感じられた。
この歌のエンディングには絶対に何かあると予感していたのだが、期待に反してただ「ものの哀れ」で終わってしまっていた。
そんな「キレイコワイ」がこの曲の魅力だと思っているのは、おそらく僕だけなのもしれない。
だからこそ、他の人はどんな風にこの曲を聞いていたのか、尋ねてみたい気持ちが無くならない。
僕は、オンタイムでの早川義夫を知らない。
しかし、早川は最近のフォーク懐メロ番組の常連で、良く目にするようになった。
その歌唱スタイルは独特で、ピアノを弾きながら歌うのだが、せわしなくイスからわずか数センチ跳ねる。
立ちあがるでもなく、跳び上がるでもなく、そう、座り心地を変える時のように何フレーズか歌うとピョコリと跳ねる。
そして、またタイミングを取るようにピョコピョコ。
早川は、それを歌のエンディングまで繰り返す。
早川の声はわずかにハスキーとビブラートを感じさせ、その歌詞に実に良く合っている。
未だに僕の中で早川の「キレイコワイ・おどろおどろしさ」は健在である。
早川は一時歌を止めて、確か(僕の記憶に間違いがなければ)溝の口辺りで本屋をやっていた。
「フォークなら中央線沿線、荻窪、高円寺、吉祥寺だよ」と思っていた僕の期待を、早川は軽く裏切ってくれていた。
「たくろう世代」の僕から見ると、早川は一つ前のフォーク世代(全共闘世代?)なのだが、おそらく学生運動とシンクロして盛り上りながら「結局は歌で世界を変えることなどできないさ」と挫折した活動家なんだろう、勝手にそう思い込んでいた。
しかし、僕の憶測が正しかったのかどうかは、全くもって分からない。
ただ、早川はその本屋を22年間続けて、そして、その本屋をたたみ、再度歌の世界に帰って来たのだと言う。
いつかオンタイムで聞いてみたいと思っていたが、それが叶ったのだ。
2003/05/28(初校)
2003/06/02(2校)
2022/02/16(追補)
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