中村雅俊、田中健、津坂まさあき(秋野太作)による「俺たちの旅」。
オープニングに出てくる、噴水、井の頭線改札口、トンネル、僕はそれをずっと白黒テレビで見ていた。
東京へ出て来て一年目、浪人時代、昼でも暗いアパートに住んでいた。
ラジオしかない僕に、2階に住んでいたおばさんが、テレビを買い換えて要らなくなったからあげると言って、貰ったものだった。
地方出身者が田舎を離れて一人暮らし。
なぜか同級生は浪人が多かったので、連絡を取り合う友には困らなかった。
土曜の夜にはいつも、西川口の同級生:Gのアパート(今更ながら、どうしてあいつは西川口なんかに住んでいたんだろう)に集まった。
ネオン街の客引き、強面の声を避けて歩いた。
そして日曜日の夜、この「俺たちの旅」を見て、みんなジーンと来て、何も言わず「じゃぁ」と別れた。
そんなことを何度となく繰り返していた。
僕は、中村雅俊ふんする津村浩介のようにカーリーヘアをしていた。
上野アメ横中田商会で買った米軍払い下げのアーミージャケットを着て、自分で縫ったツギハギのジーンズをはいていた。
吉祥寺は憧れの街、友情の街だった。
井の頭公園、噴水、改札口、野外ステージ・・・
とても懐かしい。
当時付き合っていた彼女が井之頭線沿線に住んでいたことあって、大学生になってからの僕は「井の頭公園」へ何度も足を運んだ。
以前、同級生のGと、そして友人達と観た、あの白黒テレビの中の「井の頭公園」。
僕は、もうカーリーヘアーじゃなかった。
ジーンズは、ストレートのLee に変わっていた。
彼女はレンボーカラーをあしらった服を着ていた。
こざっぱりとした大学生になっていた。
同級生のGと最後に会ったのはいつだったんだろう?
川崎辺りで暮らしているって聞いたのが最後だ。
田舎の家に聞いても分からない。
今じゃ音信不通、誰に聞いても分からなくなってしまった。
2003/12/13(初稿)
2022/03/08(追補)
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永遠の青春ドラマ「俺たちの旅」のキャストとエンディングを飾っていた散文詩